[再掲]
さて、横綱たちの戦略についてお話します。
相撲番付を参考にして、世界大恐慌に直面する人をいくつかのタイプに分類してみたのですが、とりあえず一番ダメなのは「序の口」で、「世界恐慌が来るのに全く気づかずに、いつの間にか巻き込まれて失敗している」という何も知らないタイプの人だとしました。
そして意識的に戦略を使い、しかも自分で状況を操作して勝つような人は「大関」クラスであることを指摘したわけですが、ではその上を行く「横綱」レベルはどうなの?ということまで昨日はお話させていただきました。
確認のためにもう一度その横綱について紹介しますが、
●横綱:世界金融恐慌が来たことも知らずに、しかもいつの間にか大成功している
という人のことです。
これを言い換えると、この「横綱レベル」の人は、今回起こるであろう不況という「状況」や「環境」というものに全く左右されない、ということになるわけですが、果たして本当にこんな人がいるのでしょうか?
私も色々と考えてみたのですが、どう考えても
そういう人は実在するのです。
しかも生まれも育ちもそれほど関係ない、というのがミソですね。
また驚いたことに、ある程度意識的に努力すれば、我々のような凡人でもこのような横綱レベルにまで限りなく近づくことは可能らしい。
つまり「
誰でも横綱になれる(かもしれない)」のです。
「うーん、怪しいなぁ」と思った方は、ここから先を読まなくても結構ですし、その答えを知っても「下らない」と思う方は信じなくてもいいのです。
ただし私がここで一言いいたいのは、戦略学を少しでも勉強した人は、このような横綱レベルの人がいることを、なんとなく感覚的に理解はできているはずなのです。
では答えをいいます。
横綱レベルの人がなぜ世界金融恐慌が来たことも知らずに、しかもいつの間にか大成功することができるのかというと、それは
「
運がいいから」
なのです。
あ、ちょっと待って下さい。いま心の中で、「くわー、くだらね!」とチラッと思いましたね???
まあ私は別にそう感じてもらっても一向にかまいませんし、軽蔑されてもけっこうなのですが、これには少し説明が必要になります。
たしかに「横綱レベルは運がいい」と言ってしまえばそれだけなんですが、実はこれにはかなり深い意味が隠されております。
むしろこの「運がいいから」というのはやや勘違いされやすいので、もう少し別の言い方をしたほうがいいかも知れません。
それでは言い換えます。
「
横綱レベルの人は、“自分は世界で一番ラッキーだ”と本気で信じている」
のです。おわかりいただけましたか?
鋭い方は、ここで私が「運が良い」という客観的な状態よりも、逆に「運がよいと思っている」という主観的な言葉にいいかえたことに気づかれたはずです。実はここが一番のキーポイントなんです。
まず「運が良い」とはどういうことかについて説明します。
運が良いとは、いいかえると「
なぜか失敗せずに、常に成功してしまう」という状態を指しております。
そうすると、地震・雷・火事・オヤジのような災害でも、この人を自然と避けて行くことになります。
そうなると、この人を倒そうと思った人がいたとして、そいつが頭をこねくり回して戦略をたてて、それこそインサイダー取引のような汚い手段を使おうとも、
しょせん人間というのは「運の強い人間」にはどんなにやっても絶対に勝てないのです。
ようするに、運が良い人間というのは「無敵」なのです。
たとえば今回の世界金融危機で日本に不況の「津波」が押し寄せてきたとします(こっちのメディアでは本当に「津波:ツナーミ」という言葉を使ってます)。
このような緊急事態に対して、「十両」から「大関」の人たちは、人間の脳みそという有限のものを使って必死に対処(勝負)しようとするわけですが、それでも並の人間よりも何倍も頭が良いのに失敗してしまう人というのは(確率的に)出てきます。
いいかえれば、「大関」でも一歩踏み間違えば「十両」レベルまで落ちる可能性がいくらでもあるのです。
ところが「横綱」レベルの人は、たしかに多少は影響を受けるかも知れませんが、それでも難なくピンチを切り抜けて、堂々と人生を謳歌して成功していくことになるのです。
もちろんこれは「運がいいから」なんですが、じゃあそもそもこの人はどうやって運を良くしたのかというと、そこには運の良い人すべてに共通する、
「自分は運が良い」
という勝手(アホ)な思い込みがあったからなのです。これ、信じられないかも知れませんが、本当なのです。
これについてはちょっと説明が必要なのですが、ここまで書いてまた時間がなくなってしまいました。
「運のメカニズム」や、どうすれば運を上げられるか、そして具体的に運が強い人間の例などについては、また明日書きます。
[再掲]
世界金融危機です。世界大恐慌のはじまりです。
もちろん日本でもイギリスでも、エンターテイメント的なタブロイド/スポーツ紙などでは全く関係のないくだらない話題を載せるのは同じなんですが(苦笑)、それでも状況がかなり深刻であることは確かです。
このようなショックというのは、リーマン倒産が発覚したのが今週はじめだったとして、それが我々の実際の生活に響いてくるまでにはやや時間がかかるものであり、本格的に感じられるのは、もしかすると来年になってからかも知れません。
これはたとえば日照時間が一年で一番短くなる夏至よりも、実際に暑くなるピークを迎えるのが七月末から八月初めにかけてというのと同じです。
つまり今回のような事件があっても、それが実感されてくるまで「タイムラグ」があるわけですな。
もちろん私の友人の知り合いにはすでに証券会社で首切りにあった人もいると聞きましたが、金融が主要産業であるイギリスでも、まだ庶民の生活までインパクトは来ておりません。まあまだ本格発生してから一週間たってませんから。
よって、日本のメディアでも当分の間は「対岸の火事」的な報道がつづくかも知れませんが、本ブログを読んでいるような情報に敏感な方々はこのインパクトが確実に来ることを予測できていると思いますので、後から「しまった!!」などと言わないはずだと信じております。
さて、このような世界大恐慌の発生という緊急事態の中で問題になるのは、「一体われわれ個人はどうすればよいのか?」ということ。
当然といえば当然ですが、いろんなブログやメディアを見ても、まだこのような「生き残り対策」について親切に書かれたものは見当たりません。
だからと言って地政学や戦略学を研究している私がこの「世界危機を生き残る方法」のようなものをみなさんに教えられるわけではないのですが(苦笑)、それでも何らかのヒントになるようなことは、ちょっとだけお教えできるかも知れません。
よって、ここでは簡単に「危機を乗り越える最高の戦略は何か?」ということを、かなり無責任ながら、勝手につれづれと語ってみようと思います。
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まず最初にお断りしておきますが、これから話すことはちょっと冗談に聞こえるかも知れませんし、ややぶっ飛んだ「電波的」なところがあるかも知れません(笑
ただし論理的に考えればそれなりに納得していただけることだと思うので、「なんじゃこりゃ?」と思わずに、最後まで諦めずにお読みいただければと思います。
でははじめます。
まずこの史上最大級の世界金融恐慌を生き残る戦略を考える際に参考となるのが、
相撲の番付のランキングです。
「一体何を血迷ったことを?!」と感じるかたもいるかも知れませんが、とりあえず諦めてこの前提を受け入れたことにして考えてみてください。
そうなんです。生き残りの戦略の実践者には「序の口」から「横綱」のレベルまであるのです。
これは一体どういうことなのか?以下ではこれについて一つずつ説明してきます。
●序の口:世界金融恐慌が来ることを知らずに、いつの間にか巻き込まれて失敗する
これは何も知らない間に突き落とされていたという最悪のパターンで、戦略を論じる以前の問題です(苦笑)。割合としては日本国民で働いている人全体の1〜2割いるかも知れません。
●十両:世界金融恐慌が来ることを知ってて、それでも巻き込まれて失敗する
これは日本国民の中で働いている人全体の6割から7割くらいでしょうか。ほとんどの人がわかっていても影響を受けて苦しくなるわけですから、これが普通の状態ということになります。もちろんこのレベル人々はそれなりに戦略を立てるのかもしれませんが、それでも「環境」や「状況」に負けてしまいます。
●前頭:世界金融恐慌が来ることを知っていて、なんとか対処して切り抜ける
これはかなり少ないと思いますが、とりあえず心の準備はできていて、なんとか自分で対策を練り、実際の不況の嵐が来ても以前と同じレベルの生活をギリギリなんとかキープできるという人々です。割合としては一割弱と言ったところでしょうか。戦略的にものごとに対処して、「環境」や「状況」になんとか順応していけるレベルですね。
●小結:世界金融恐慌が来ることを知っていて、それをチャンスに変えて成功する
このような人々はほとんどいないのですが、ごく稀にピンチをチャンスに変えて大躍進してしまう人もいるわけです。恐慌のおかげで逆に儲かってしまう人ですな。自前に戦略をしっかり練って、しかもそれを成功させてしまう手腕の持ち主のことです。基本的に普段から情報にかなり敏感な人がここに入るでしょう。クラウゼヴィッツ的に言えば「天才」というのがここの部類に入ります。割合としては4%もいれば良い方かも知れません。
●大関:自分から恐慌を仕掛けて大儲けする
ちょっと陰謀論的かも知れませんが(苦笑)、それでもこのようなインサイダー取引的なことをして大儲けする人は残念ながらこの世の中に少なからず存在するのです。状況にどう対応するかというよりも、むしろ自分たちで状況を作って仕掛けるような人々のことですね。割合としては1%以下でしょう。
さて、ここまでこのようなランキングを書きましたが、実はこれより上のレベルがあるのです。信じられないかも知れませんが、言われてみればなるほどと納得していただけると思います。
それはなんと、
●横綱:世界金融恐慌が来たことも知らずに、しかもいつの間にか大成功している
というものです。割合として0.1%くらいでしょうか。
「なんじゃそりゃ」と言ってあきれている人もいるかも知れませんし、「バカやろう!こんな下らないブログなんか読んでられっか!」という人もいるかも知れませんが、まずは落ち着いてください。
実はここから先が大事なのです。
前頭から大関レベルまでというのは、そこに「意図的な戦略」というものが関わってきます。
つまり、これらのレベルの人々というのは、「こうなるからこうしよう」という意思の力を働かせ、いわば「理性的」かつ「合理的」(ラショナル)に物事に対処するわけです。
もちろんこれらが成功するかどうかというのは、大関レベルのように本当にインサイダーとして仕掛けている場合を除いて、確実とはいえません。
また、その「合理性」というものが常に正しいという保証もないことは、「テロとの戦争」で泥沼にはまるアメリカの過去数年間の国家戦略の流れを見てみれば一目瞭然でしょう。
いや、よく考えてみれば、
大関レベルでもガセネタをつかまされたり土壇場で裏切られたりして踏み外すということもありえます。
ところが横綱レベルになってくると、こういう現象を越えてしまいます。つまり彼らは何をやっても成功してしまうわけなのです。これを言い換えれば、
「彼らは状況や環境に全く左右されない」
ということになります。
ではこの違いはどこから出てくるのでしょうか?そんなことはあり得るのか?
と、ここまで書いて時間切れです。この続きはまた明日。
北京五輪で8個の金メダルを獲得したマイケル・フェルプスの話題を。といっても、これはあくまでも戦略学に近い話。
とりあえず以下のリンクからサイトをのぞいてみて下さい。
http://news.goo.ne.jp/article/ft/sports/ft-20080820-01.html
フェルプスは早くも2012年大会を夢見る――フィナンシャル・タイムズ
2008年8月20日(水)20:26
(フィナンシャル・タイムズ 2008年8月18日初出 翻訳gooニュース) 北京=ロジャー・ブリッツ
その部屋に行けばマイケル・フェルプスがいるよ、と言われていた。身長193センチ体重88キロものその人が。しかし部屋に入っても、すぐには気づかなかった。一瞬の間があいてやっと気づいてみれば、確かにそこにマイケル・フェルプスがいた。ほんの数フィート先に。大きな肘掛け椅子に、これ以上は深く沈みこめないというほど深く身を沈めて。前かがみになって、頭がほとんど膝につくくらい、椅子にぐったりと埋もれていた。
オリンピック史上、最多メダルを獲得した男。9日間で17回もレースに出場し、4つもの個人世界記録を破り、8個もの金メダルを自分のものにした男は……グッタリへばっていた。
フェルプスは今大会でレースを終えるたびにプールから上がり、何気ない様子で更衣室へ向かい、競泳会場の「ウォーターキューブ」に響き渡る拍手と歓声を一身に浴びていた。
しかし36年前にマーク・スピッツが打ち立てた「金7つ」の記録を超えた翌日の18日午後、フェルプスはもはや起きているのも大変だという様子で疲れ果てていた。
米ボルティモア出身の23歳はすでに体力回復モードに入っているが、4年後のロンドン五輪に向けて夢はさらに膨らんでいる。そして24日の閉会式も、フェルプスは北京ではなくロンドンで参加する予定だ。
フェルプスは北京で史上最高のオリンピック選手となり、この10日ほどは世界の話題の中心にいた。となれば今しばらく北京に残って、閉会式を「鳥の巣」で迎えたいと思ったとしても無理はない。
けれどもフェルプスは2012年大会の実行委員会がロンドン中心部で開くパーティーの、目玉ゲストとして招かれているのだ。北京からロンドンへの五輪引き継ぎ記念行事として、ロンドンのパーティーの様子は閉会式当日、「鳥の巣」の9万人に生中継されることになっている。
「4年後に自分がどういうところで競うのか、見ておける」 フェルプスはフィナンシャル・タイムズにこう語った。
マーク・スピッツは1972年のミュンヘン五輪の後、22歳で引退した。しかしフェルプスにはそんなつもりは全くない。
「ぼくは4年前の自分と同じ人間。ただ泳ぎが速くなっただけ」とフェルプス。
フェルプスには自分の目標を書き留めておくという習慣がある。「自分の目標についてとか、オリンピックで出る全レースで勝ちたいとか、そういうことを全部書いておいた。そのすべてを今週、実現できた」
「毎年そうするんです。自分が何を達成したいか。目標と、それをどうやったら実現できるか、そのためには何をどうしなきゃならないか、具体的に書き留めておく」
予想タイムや出したいタイムも書いておくし、タイム実現のために超えなくてはならないスプリットタイム(ターン時のタイム)も書いておく。
フェルプスは北京で4つの世界新記録を出して、自分自身の目標を達成した。今大会で出た競泳の世界新は25個。専門家の間では、これは北京のプールの深さや、スピード社の噂の水着など、テクニカルな要因が大きいという人もいる。
しかしフェルプスはそうは決め付けない。「水泳選手がこれまで見たこともないレベルに到達してきた、というのも要因としてあると思う。すごいワクワク感がある。新しい人たちも出てきていて、みんなの練習量も増えている。選手はみんなもっと上を上を目指していて、それが結果になっている」
これほどたくさんの世界新が出たことと、プールや水着などのテクニカルな要因とは、関係しているのだろうか? 「人によってはそうかもしれないけど、プールはしょせんプールだし。水着も、要素としては小さい。確かに水着のおかげで、記録を破るのに必要な0.01秒とか0.02秒とかが稼げるが、それよりもどうやって練習を積んで自分を調整するかの方が大事だ」
「記録は破るために作られるもの。みんながもっと速くもっと速くと期待してくれる。これからも選手はどんどん速くなるし、記録を破り続けるはずだ」
フェルプスのモチベーションは、自分の内側から湧き上がるだけではない。外から与えられるだけでもない。その両方だと言う。
「ぼくは全部だ。誰かがぼくについてあれこれ言って『フェルプスには無理だ』と言えば、もちろんそれで俄然、やる気が出るし。自分に目標があれば、自分が実現したい目標に向かって泳ぐし」
ではレースの最中に何を考えているのかというと、答えは「なにも」だ。「むしろ、いかに自分らしい泳ぎをするかだと思う。試合に出て、必死になって泳ぐだけ。何も考えていない。ただそこにあるのは『負けるのが大嫌い』というそれだけ」
練習は「疲れるし、イライラする」とフェルプス。彼を駆り立てるものは、競争だという。「試合が大好き。競争するのが大好きなんだ。あまりそれについて考えたりしない」 レースの最中には記録のことを考えているわけではないのだという。
そのほかにも、プールの外の世界のことも考えるという。それがどういうことか詳しくは語ってくれないが。「世界のあちこちで何がおきているか、いつも気にしている」とフェルプス。
アメリカ国歌「星条旗」演奏の最中、フェルプスは左胸に手をあてている。そして時には下唇を震わせることもある。その姿のおかげで彼は母国で、まるで英雄のように崇め称えられているし、本人の中でも愛国心が熱く燃え盛っている。
「たしかに感情的になることもある。自分がアメリカ人だということを誇りに思っている。世界最高の国のために泳げるんだから」 では国のために戦う意志はあるのだろうか。「もし必要なら」
世界の注目を浴びつつも、フェルプスは今のところゆったり構えている。しかし選手村やウォーターキューブの外に出て、自分の偉業のインパクトを実感するのは、まだこれからだ。まずロンドンで24日に、その一端を味わうことになるだろう。
そのあとは、また水の中だ。「これから4年間なにをするのか? 練習して、遊んで、また練習して、もっと速く泳げるようにがんばる。ぼくにはそれしかできないから」
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この記事、もとFT紙のインタビューものなんですが、この中には戦略学だけでなく成功法則のエッセンスが一杯つまっております。
具体的にどれかというのはみなさんの想像にお任せしますが、この記事を読んだ私は「やっぱりこいつもそうだったか」と妙に納得してしまいました。彼は意外と奥が深いことを答えております。
一つの大会で金メダルを8つも獲得する人間というのは、やはり他の人と違うということがよくわかります
今日から「横綱論」のトピックに関してはこちらに載せることにします。
古いものから順に横綱論に関するエントリーはすべてこちらに移します。
今後ともよろしくお願いします。
ブログ主拝